この記事でわかること
- バーチャルマーケットがVRChatでしか開催されない理由
- clusterにもあった即売会「アバターマーケット」のその後
- クリエイターがVRChatとclusterをどう使い分けるべきか
いま開催中のバーチャルマーケット2026 Summerを調べていて、ふと疑問に思いませんでしたか。これだけ大きなメタバースのお祭りが、なぜVRChatでしか開かれていないのか。国内で人気のclusterでは、なぜ同じようなマーケットが見当たらないのか。この記事では、両プラットフォームの数字と歴史を並べて、マーケット型イベントでVRChatが事実上の一人勝ちになっている構造を解説します。
先に結論を言うと、clusterがマーケットで負けたというより、clusterはお祭り型の即売会から降りて、別の土俵を選んだというのが実態に近いです。順番に見ていきます。
バーチャルマーケットの規模はすでに桁違い
バーチャルマーケット(Vket)は、株式会社HIKKYがVRChat上で開催するマーケットイベントです。第1回は2018年8月、わずか約80サークルの出展で始まりました。それが今では世界中から来場者を集める規模に成長しています。
Vketの規模を示す数字
- 2024 Summerの来場者は延べ130万人以上で過去最多を記録
- バーチャルリアリティマーケットイベントにおけるブースの最多数など、ギネス世界記録を4つ達成
- 2024 Summerは企業・IP出展が約85社、一般サークルは1,000以上
延べ130万人という数字は、リアルの大型同人イベントの来場者数を延べ人数で大きく上回る水準です。もはや同人イベントの延長ではなく、世界最大級の商業イベントと言っていい規模になっています。今回の2026 Summerの入り方や必要な機材はバーチャルマーケット2026の入り方の記事で詳しく解説しています。
土台のVRChat自体が今もっとも勢いのあるメタバース
マーケットが育つには、そもそも人が集まる場所であることが前提です。この点でVRChatの勢いは数字にはっきり出ています。
2026年の年越しでは、同時接続者数が14万8,000人を超えて過去最多を更新しました。しかも日本のユーザー数は前年から3.9倍に増え、VRChat公式サイトの訪問者数では日本が国別シェア37パーセントで世界1位になっています。配信者の影響で日本人が急増した2025年からの流れが、そのまま定着した形です。
つまりVketの一人勝ちは、日本のクリエイターにとって身近な場所で起きている現象だということです。VRChatそのものについてはVRChatとは?できること・始め方の解説記事をどうぞ。
実はclusterにもマーケットイベントはあった
ここが今回いちばん伝えたいところです。clusterにマーケットが無かったわけではありません。clusterはかつて、アバターの展示即売会「アバターマーケット」を自社開催していました。
| 開催回 | 実績 |
|---|---|
| アバターマーケット2022 春 | 来場者8万3,627人、アバター販売数7,762体 |
| アバターマーケット2023 春 | クリエイター301人が出展、販売アバター総数9,500体以上、1人あたり平均購入額5,075円 |
数字を見ると、販売単価も伸びていて手応えはあったはずです。それでも来場者数はVketの延べ130万人に対して8万人強。同じ即売会という土俵では、規模に文字どおり桁違いの開きがありました。
2023年を最後にイベント型から常設型へ
そしてアバターマーケットは、2023年春の開催を最後に大型の続報が確認できなくなります。代わりにclusterが2024年9月に実装したのが、ワールドやイベントの中に商品を展示してその場でアバターを買えるワールド内アバター販売機能でした。年に数回のお祭りで売る形から、365日いつでも売れる常設ストア型へ方針を切り替えたわけです。
clusterは2024年の自社カンファレンスでも、個人クリエイターの収益化システムづくりに本格的に取り組むと表明しています。イベントの派手さでVketと張り合うのではなく、日常の経済圏を作る方向に舵を切ったと見るのが自然です。この背景には、以前ラジオ回で取り上げたclusterの赤字19億円問題で語られた、収益構造の立て直しという事情もあるはずです。
なぜマーケット型イベントはVRChatに集中するのか
それにしても、なぜお祭り型のマーケットはVRChatばかりなのか。理由は大きく4つあると考えています。
理由1:ワールド表現の自由度が高い
VRChatはワールドに独自のギミックやシェーダーを組み込める自由度が非常に高く、ブースや会場の作り込みがそのまま見どころになります。Vketの会場が毎回話題になるのは、この表現力があってこそです。
理由2:アバター改変とBOOTHの経済圏がすでにある
VRChatのユーザーには、買ったアバターや衣装を自分で改変して着る文化が根付いています。3Dアイテムを買う理由が日常の中にあり、BOOTHなどの販売サイトを通じた市場が先に存在していました。マーケットはその経済圏の上に乗った出口です。
理由3:世界中から人を呼べる
来場130万人という数字は、日本国内だけでは作れません。VRChatは海外ユーザーの厚みがあり、そこに近年の日本ユーザー急増が重なりました。出展者から見れば、1回の出展で国内外に同時にリーチできる場は他にありません。
理由4:HIKKYという専業の運営会社がいる
Vketはプラットフォーム運営者ではなく、イベント専業の株式会社HIKKYが作っています。会場制作、企業誘致、リアル会場との連動までを毎回積み上げてきた運営ノウハウ自体が参入障壁になっていて、後追いで同じ規模を作るのは簡単ではありません。
クリエイターはどう使い分けるべきか
ここまでの構図をクリエイター目線で整理すると、こうなります。
| 目的 | 向いている場所 |
|---|---|
| 短期間で一気に露出して売りたい | VRChatのバーチャルマーケットに出展。お祭りの集客力を借りる |
| 常設でこつこつ売り続けたい | clusterのワールド内アバター販売やクリエイター向け機能 |
| スマホユーザーに広く届けたい | スマホだけで遊べるclusterが有利。clusterの使い方ガイドを参照 |
一人勝ちという言葉だけを見るとVRChat一択に思えますが、稼ぎ方の設計としては、お祭りのVRChatと常設のclusterは競合ではなく役割分担です。個人がメタバースで販売を始める具体的な手順はメタバースでコンテンツ販売を始める方法の記事で解説しています。
一人勝ちの裏にあるリスクも知っておく
最後に、あえて逆側の視点も置いておきます。1つのプラットフォームに人と経済が集中する状態は、クリエイターにとって便利であると同時にリスクでもあります。
一極集中の注意点
- VRChatの規約や機能の変更が、そのまま自分の売上に直撃する
- マーケットの出展枠には限りがあり、抽選や審査に左右される
- お祭り型は開催期間中に売上が集中し、年間を通じた収入が読みにくい
メタバース業界は、勢いのあったサービスが数年で方針転換する例が珍しくありません。だからこそ、お祭りのVRChatで露出を取りつつ、clusterの常設販売やBOOTHのようなストアで平常時の販路も持っておく。一人勝ちの場所に乗ることと、そこだけに依存しないことは、両立させておくのが安全です。
よくある質問
Q: バーチャルマーケットはclusterでも開催されていますか?
A: 開催されていません。バーチャルマーケットは第1回からVRChat上で開催されています。clusterには過去にアバターマーケットという即売会がありましたが、2023年春を最後に大型開催は確認できず、現在は常設のアバター販売機能が中心になっています。
Q: VRChatとclusterはどちらが人気ですか?
A: 土俵によって変わります。VRChatは2026年の年越しに同時接続14万8,000人超を記録するなど世界規模で勢いがあり、clusterはスマホだけで遊べる手軽さで国内イベントに強いです。マーケット型イベントの規模ではVRChatが圧倒しています。
Q: 3Dアイテムやアバターを売るならVRChatとclusterのどちらがいいですか?
A: 短期間で多くの人に見てもらいたいならVRChatのバーチャルマーケット出展、常設でこつこつ売りたいならclusterのワールド内アバター販売が向いています。目的に合わせた使い分けがおすすめです。
まとめ
この記事のポイント
- マーケット型イベントは来場130万人超・ギネス4冠のVket(VRChat)が事実上の一人勝ち
- clusterにもアバターマーケットという即売会があったが、2023年春を最後に常設販売へ方針転換
- VRChat集中の理由はワールドの自由度、既存の3Dアイテム経済圏、世界規模の集客力、専業運営HIKKYの4つ
- クリエイター目線では、お祭りのVRChatと常設のclusterは競合ではなく使い分け
開催中のバーチャルマーケット2026 Summerは7月26日までです。一人勝ちの現場を自分の目で確かめたい人は、入り方と必要スペックの記事を見ながらぜひ入場してみてください。


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