HABINA TALK

文字より“体験”で伝える「デジタルたぬき職人」YUMEさんの挑戦とメタバースが開く学びの未来|第11回 HABINA TALK

第11回「HABINA TALK」では、ゲストに“デジタルたぬき職人”のYUMEさんを迎え、タッチデザイナー(TouchDesigner)を核にした映像・音楽パフォーマンス、メタバースでの作品展開、そしてご自身の学習特性を起点にした「伝わる表現」づくりについて語られました。

本記事はその内容を、初めての方にも分かりやすいように再構成した要約です。

キーワードは、手の動きに反応するライブ演出/体験としての学び/メタバース×音楽×ビジュアルの統合

伝える手段が文字から体験へと移るいま、クリエイションと教育の交差点に立つ夢さんのビジョンを追います。

“デジタルたぬき職人”とは何か

YUMEさんの肩書きは一度聞いたら忘れない「デジタルたぬき職人」。

伝統工芸の“たぬきの置物”に通じる「職人」の精神を、CG・リアルタイムビジュアル・音楽といったデジタル技法で現代化する構想です。

ステージ上のパフォーマー=職人として、粘土を壊す・形を生むといった“手の所作”に合わせ、背後の大型ビジョン上の3Dオブジェクトが反応して形を変える。

身体と映像の直結によって、ものづくりのライブ感をそのまま可視化し、観客と共有する。これがYUMEさんの核となる表現です。

たぬきというモチーフの理由

幼少期から常にそばにあったのが“たぬき”。

ぬいぐるみ、園でのマーク、野山で見かけた実在のたぬき……人生の記憶と結びついた存在だからこそ、創作の中心に据えるのは自然な流れでした。

伝統の“たぬき置物”文化を参照しつつ、制作プロセスは粘土や窯の代わりにBlenderやTouchDesignerへ。

昔ながらの職人仕事を、デジタル時代の手つきでやってみたら?という挑発的な問いが、この肩書きに凝縮されています。

TouchDesignerで“手の動き”を映像化する

YUMEさんの現在地は、TouchDesignerを用いたリアルタイム映像表現

カメラトラッキングで親指と人差し指を検出し、その距離や動きに応じて画面上のオブジェクトが変形・破壊・再構成します。

ポイントは、完璧に作り込まないこと

立方体や簡素な形状でも、ノイズや周波数応答などを噛ませると、想定外の“良い偶然”が生まれる。

即興性が強く、音楽(周波数・音量)と映像の反応がリアルタイムに結びつくため、VJやプロジェクションマッピングの現場とも相性が良いのがTouchDesignerの強みです。

体験が記憶をつくる、そしてメタバースへ

YUMEさんがメタバースに惹かれる理由は明快です。

「音楽や作品を“居場所”とセットで届けたい」


1曲1曲を別の部屋に収めた“たぬきのワールド”を作り、「この曲=この空間・色・体験」という紐づけを行う。

視覚・身体感覚を通した記憶定着は、文字が頭に入ってこない特性(ディスレクシア)を持つ自身の実感に根差しています。

文字で説明されるより、色や形、空間として“感じる”方が分かる。
この個人的な必要が、誰にとっても分かりやすい鑑賞体験の設計へと拡張されていきます。

学習特性が導いた“わかりやすさ”の設計

YUMEさんは、学生時代から文字の読みにくさに直面してきました。

作品キャプションが頭に入ってこない、教科書が読めない。

そこで身についたのが、人や場の空気を読む力、直感、洞察

さらに「説明書より手を動かす」スタイルが、行動の速さを生みました。

この経験が、“読むより体験する”展示設計へと繋がります。

もし「文字が読めない子でも分かる」表現ができたなら、それはより多くの人にも分かりやすいはず。アクセシビリティを起点に普遍性へ、という逆転の発想です。

子ども×デジタルのワークショップ構想

対話の中で盛り上がったのが、子ども向けの体験会

粘土をこねる“手の遊び”が、そのままスクリーン上で光や形のダンスになる。

親子で見ても楽しく、「自分の手で世界を変える」手応えが残る。


マインクラフト世代の創造性と、リアルタイムビジュアルの魔法感
は相性が良い。5人程度の少人数でも場は成立し、成果物は映像作品として持ち帰れる

教育・地域イベント・企業のファミリーDAYなど、応用先は広いはずです。

AIとの親和性|“雑”から始めて、驚きを育てる

タッチデザイナーで動かした“ラフなモデルやブラシの落書き”を、AIがリアルタイムで高精細化し、精巧な蝶や花へと“昇華”させる事例が話題に。

ここにあるのは、「完成度ゼロでも始められる敷居の低さ」と、「偶然を味方にする創作サイクル」

ざっくり作る → リアルタイムで動かす → 反応や偶然を観察 → AIで磨く → さらに触発されて作る

この循環は、大人の現場にも教育の現場にも実装可能です。

成果より過程、正解より発見を重視する学びの設計にフィットします。

デザインリサーチ:光から生まれた“デジタルたぬき”

YUMEさんの絵画作品の一つは、クラブのLEDモニターを超至近距離で観察した縞模様や色むらから配色・テクスチャを抽出し、たぬき像へ翻訳したもの。

身近な“光学現象”を視覚言語化するこの姿勢は、観察→抽象化→再構成というデザインの王道プロセス。

6月に描いた絵から3か月後には、インタラクティブな映像体験へと表現が進化しており、アウトプットの媒体を横断しながらも、コアの着想は“光と体験”に一貫しています。

メタバースで広がる“ふざける自由”とブランド設計

ライブでは「かっこいいデジタル職人」を押し出し、メタバースでは“ふざけもOK”の遊び場として拡張。

シーンに応じてペルソナを切り替える設計は、ファンの裾野を広げます。

たぬきのヘルメットを被る音楽家の友人を案内役キャラクターに据え、物語性と回遊性を担保する構想も。

さらに、“自分の化身”をキャラクター化し、ブランド(もう一人の自分)として振る舞わせるのは、メタバース時代の個人クリエイターに有効な戦略。

視覚的アイコンは、発見・記憶・拡散の全段で効きます。

情報過多の時代に、行動で学ぶ

「情報を集めすぎて動けない」より、作りながら調べる

YUMEさんのワークスタイルは、プロトタイピング学習そのものです。

説明書が読みにくいぶん、“まず触る”が標準になり、行動量が増える。
この姿勢は、クリエイティブに限らずビジネスや学習全般でも再現可能。

  1. 小さく始める(最短で動く形を作る)
  2. 反応を見る(体験と手応えを言語化)
  3. 必要な情報にだけ戻る(深掘りは後)
    という反復サイクルは、現代の「変化が速い」環境で強力に機能します。

今後の展望

  • ライブ型“デジタルたぬき職人”の確立:手の動き・音・映像が連鎖するパフォーマンス形式を磨く。
  • “たぬきのワールド”制作:楽曲ごとに部屋を用意し、視覚×聴覚×身体感覚の統合体験を設計。
  • 教育・ワークショップ:子ども向け体験会で「手で世界を動かす」喜びを提供。成果は映像作品に。
  • キャラクターブランディング:案内役キャラと共に、ライブとメタバースを横断する物語を展開。
  • アーカイブと発信:Instagram/YouTube/Xで進捗を断片的に公開し、製作過程そのものを作品化

まとめ|“読む”から“感じる”へ

夢さんの実践は、文字中心の伝達から、体験中心の理解へという時代の地殻変動を、個人の創作と教育に接続した試みです。

  • TouchDesignerで“手の所作”を映像化
  • メタバースで“曲=空間”として記憶に刻む
  • 学習特性を起点に“誰にでも伝わる”展示設計へ
  • AIで“雑から奇跡”を引き寄せる創作サイクル
  • 行動ファーストで、過剰な情報に溺れない

“たぬき”という個人的な原風景から、体験を設計する職人へ。

YUMEさんの歩みは、クリエイターが自分の特性を“武器”に変え、観客の理解を“体験”として設計するヒントに満ちています。

次のライブ会場で、あるいはメタバースの“たぬきの部屋”で、あなたの手の動きが世界を変える瞬間に出会えるはずです。

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